3月17日 (水)  韓国(ソウル、清州、釜山、慶州)の旅2

17日(水)2月のはじめ、ソウルの日本文化院でのコンサートを終えて日本に帰ってくる朝、コーヒーショップで読んだ新聞に、トジョンファンさんが病気療養のため教職を退職されたという記事が載っていました。日本に戻ってからすぐに電話をかけてみたのですが、電話は通じませんでした。たぶんお見舞いの電話が殺到して、受け取ることができなかったのでしょう。今回韓国に行く前に連絡が取れて、忠清北道の清州から山の方に1時間ばかり入ったところにある、トジョンファンさんが療養してらっしゃる家にお見舞いに行きました。
この日もチェウギさんがわざわざ仕事を休んで、愛車の四輪駆動車で私を案内してくれました。デコボコの山道をのぼって、車を止めて細い道を数分歩いて下って行くと、トジョンファンさんが家の前に出て私たちを待っていてくれました。
友人がここで療養するように、と提供してくれたという家は、とてもすばらしいものでした。大きな岩の上に建てられた黄土の家は、見渡すかぎりの自然に囲まれています。美しい彫刻を施した木のドアを開けると、広々としたリビングでは、暖炉の中でクヌギの木が暖かい、優しい炎をたたえて燃えています。3月中旬にしてはめずらしく冷え込んだこの日、寒さで縮こまっていた私たちの身体も心も、家の中に入るなりポカポカと温まってくるような気がしました。
2年ほど前から、過労とストレスのため自律神経を病んでいらしたトジョンファンさんは、この家で毎朝気の鍛錬と瞑想をしながらゆっくり過ごしてるうちに、病気は少しずつ
よくなってきたそうです。
庭から採ってきたくるみや果物、蓮の花のお茶、畑で採れたお芋を薪にくべて焼いてくれたものをいただきました。自然のご馳走をいただきながら、とりとめのない話しをしているうちに、時間が経つのも忘れてしまいました。
次の予定があるのを忘れてすっかり長居をしてしまった私たちは、後ろ髪を引かれながら、再会を約束して家を後にしました。トジョンファンさんは、私たちが見えなくなるまで、ずっと手を振って見送ってくれました。
帰りがけに、彼が話してくれた奥様の共同墓地のそばに車を止めて、シルボン(臼の峰)をさがしました。道ばたに咲いているなでしこの花を手折って奥様の墓地に墓参りに行く道すがら、本当に彼女の魂がシルボンを越えて自分に会いにくるような気がした、という話しが深く印象に残っています。

「あなたの墓のそばに」詩:トジョンファン、曲:李政美

 あなたの墓のそばに なでしこの花供えてくれば
 あなたは雲となり シルボンを越えて 私についてくる

 あなたの墓の前に 弔いの火を焚いてくれば
 あなたは宵闇の 星となり 私についてくる

 あなたの墓のそばに 歌をひとつ残してくれば
 あなたは草むらの虫の音となり 戸口(いえ)までついてくる

 あなたの墓の上に 涙一粒こぼしてくれば
 あなたは降りそそぐ雨となり 肌にしみ通ってくる


清州からソウルに向かう途中、大渋滞に巻き込まれ、3時間もかかってヨウィドに到着。実の姉のように慕っている作家の朴慶南(パクキョンナム)さんたちとの約束の時間に30分も遅れてしまいました。キョンナムさんは、国会議員の金希宣さんを応援する会の人たちに誘われて、この日から2泊3日の予定でソウルに来ていました。金希宣さんとの会食に是非一緒に、ということで、私も一緒に会食に参加させてもらいました。大統領の弾劾のニュースで度々テレビ画面にも登場(係員?に引きずられていくおばさん議員)した金希宣議員は、予想通り、とてもパワフルでステキな女性でした。
会食の後、キョンナムさんと仁寺堂に移動して、この日のお昼にソウル入りした神宮寺(毎度お世話になっている松本のお寺)のスタッフみさこちゃんと合流。キョンナムさんとの始めてのソウルの夜を満喫したのでした。

写真1、2 とじょんふぁんさんと
3 シルボンを背景に

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