5月26日 (火)  窯入れ

先週末、福島県須賀川市の山間の小さな村にある「鉢の子窯」を訪ねた。
「窯に火を入れるから遊びにおいで〜」と窯の主の伊藤文夫さんが誘ってくれたのだ。伊藤さんは曹洞宗の僧侶でもある。
「鉢の子窯」で初めてコンサートをひらいてもらったのは、もう6,7年前だったろうか。4年前に二度目のライブをやってから、何回か遊びに訪れ、
ろくろのまわし方を教えてもらったり、薪割りのお手伝いもさせてもらった。窯入れのお手伝いをさせてもらったのは今回がはじめてだ。
5〜6メーターもある登り窯に、六日間絶え間なく薪をくべ、燃やし続ける。こんな原始的なやり方を続けている窯は、かなり珍しいそうだ。
朝7時から午後1時まで、窯に薪をくべる作業を手伝った。千度を超える炎は美しいオレンジ色の光を放っている。炎の色を見れば、温度計に頼らずとも大体の温度がわかるそうだ。
何時間も薪をくべていると、衣服や軍手がかすかに焦げ臭く、顔や体中の表皮がヒリヒリと痛んでくる。燃え上がる炎のエネルギーにあたって、心臓もバクバクと鼓動してくる。伊藤さんはもう40数回目の窯入れだが、不整脈を起こして救急車で運ばれたこともあるらしい。
今時電気やガスなんかの簡単な窯があるだろうに、登り釜にこだわるのはどうしてなんだろう。
「出来上がった焼き物に宿るバイブレーションが違うよ」と伊藤さんは言う。
そうなんだ、すべてはバイブレーションが大事なんだ。歌もまた。最近、おぼろげながら、私もそう思う。



分水嶺から落ちる水音を背に
一日が明け暮れる
山間の小さな村にある陶房の辺りには
野の花が楚々と咲き キツネやムササビ
時にはカモシカも その凛しい姿を
みせる  あたり前だが
薪を割り土を練り窯を焚く
毎年毎年のその繰り返しの中から
何か自分の正体がぼんやりとでも
視えてくれば幸いである
ー鉢の子窯のHPからー

鉢の子窯のHP
http://music.geocities.jp/tmngj530/index.html