Diary 2009. 5
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5月20日 (水)  大銀杏の樹

17日、娘が三歳の時から3年間お世話になった「さかえ保育園」50周年記念の行事に呼んでいただいて歌ってきた。
矢切の渡しの近くにある市川市北国分に娘とふたりで移り住んだのは、ちょうど私が三十歳の頃だった。
昼間は月曜から土曜までビルの窓ガラス清掃、夜は週三日定時制高校の講師という綱渡りのような毎日。
中型のバイクの後部座席に娘と仕事道具を乗せて朝一番に娘を保育園に預け、仕事を終えて夕方とっぷり日が暮れてから迎えに行く。定時制高校へ行く日は、友人にお迎えを頼んで夜中まで預かってもらった。
ここまで書いて、う〜、なんてひどい親!とあきれてしまう。よくもグレないでまっすぐに育ってくれたものだ。
我が子のように娘を慈しんでくれたさかえ保育園の園長先生をはじめ、先生方、そして親友のせっちゃんに心から感謝している。
一緒に行事に参加した娘と夕ご飯を食べながら、「ガキってほんとかわい〜。子どもを育てるのってきっと超おもしろいよね。そんなチャンスもったいないから私は子どもといつも一緒にいるお母さんになりたいんだ」と娘がぽつんと言った。「うん、うん、そりゃあそうよ」と答えながら胸が締めつけられる思いがした。
娘よ、いい子に育ってくれてありがとう。



5月26日 (火)  窯入れ

先週末、福島県須賀川市の山間の小さな村にある「鉢の子窯」を訪ねた。
「窯に火を入れるから遊びにおいで〜」と窯の主の伊藤文夫さんが誘ってくれたのだ。伊藤さんは曹洞宗の僧侶でもある。
「鉢の子窯」で初めてコンサートをひらいてもらったのは、もう6,7年前だったろうか。4年前に二度目のライブをやってから、何回か遊びに訪れ、
ろくろのまわし方を教えてもらったり、薪割りのお手伝いもさせてもらった。窯入れのお手伝いをさせてもらったのは今回がはじめてだ。
5〜6メーターもある登り窯に、六日間絶え間なく薪をくべ、燃やし続ける。こんな原始的なやり方を続けている窯は、かなり珍しいそうだ。
朝7時から午後1時まで、窯に薪をくべる作業を手伝った。千度を超える炎は美しいオレンジ色の光を放っている。炎の色を見れば、温度計に頼らずとも大体の温度がわかるそうだ。
何時間も薪をくべていると、衣服や軍手がかすかに焦げ臭く、顔や体中の表皮がヒリヒリと痛んでくる。燃え上がる炎のエネルギーにあたって、心臓もバクバクと鼓動してくる。伊藤さんはもう40数回目の窯入れだが、不整脈を起こして救急車で運ばれたこともあるらしい。
今時電気やガスなんかの簡単な窯があるだろうに、登り釜にこだわるのはどうしてなんだろう。
「出来上がった焼き物に宿るバイブレーションが違うよ」と伊藤さんは言う。
そうなんだ、すべてはバイブレーションが大事なんだ。歌もまた。最近、おぼろげながら、私もそう思う。



分水嶺から落ちる水音を背に
一日が明け暮れる
山間の小さな村にある陶房の辺りには
野の花が楚々と咲き キツネやムササビ
時にはカモシカも その凛しい姿を
みせる  あたり前だが
薪を割り土を練り窯を焚く
毎年毎年のその繰り返しの中から
何か自分の正体がぼんやりとでも
視えてくれば幸いである
ー鉢の子窯のHPからー

鉢の子窯のHP
http://music.geocities.jp/tmngj530/index.html



5月28日 (木)  いなほ保育園

埼玉県桶川市にある「いなほ保育園」の園長の北原和子さんの本が出版されたお祝いに、作家の朴慶南さんと一緒にいなほ保育園に遊びにいってきた。
いなほ保育園を訪れるのはこれで三回目。
JR桶川駅から車で約15分。保育園の入り口には門も看板もなく、約二千坪の広い林の中に木造の園舎がポツンポツンと数棟立っている。入り口を入ってすぐの中庭には、馬やヤギ、駄馬、犬、などの動物が飼われている。
現在いなほ保育園には、幼児ばかりではなく、小学校に行かないこどもたち、学童のこどもたちも含めて約120名が通っている。
午後3時過ぎに保育園に着くと、0歳から1歳くらいのおちびちゃんたちはお昼寝、小学生たちはベランダでおやつを食べ、ホールでは2歳以上のこどもたちが和子さんの伴奏で元気な声で歌っていた。うわ〜、むずかしそうな合唱曲!
私たちが到着したのに気が付くと、和子さんがピアノの手をとめて「今日はステキなお客さまが見えたので、お昼寝はなしにしてもうすぐ劇場がはじまりますよ」と言うと、こどもたちは大喜びでやった〜1やった〜!とうれしそうにホール中を駆けまわっている。
「劇場」がはじまると、お昼寝していたおちびちゃんたちも起きてホールに集まってきた。
まずはアカペラで「星めぐりのうた」。こどもたちは宮沢賢治が大好きだ。不思議なことに、グズッたり騒いだりするこどもがひとりもいない。みんな目を輝かせて歌を聴いている。ものすごい集中力。
「京成線」は発声練習をしながら、「わたしと小鳥とすずと」は、きょんなむさんに手話の手ほどきをしてもらってみんなで一緒に。
その後、小学生たちがチャングを身体にむすんで踊りながら演奏してくれた。そのお礼に私もチャングをたたきながら「ミリャンアリラン」を歌う。すぐに「アリアリラン、スリスリラン」と一緒に口ずさんでくれる。
最後は小学生たちと一緒に「故郷の春」と「朝露」を韓国語と日本語で歌う。正確な発音ときれいなコーラス。和子さん、どんだけ仕込んだのかしら、と思って聞いてみたら、「みんな勝手におぼえちゃうのよ、おほほ」ですと。ほんまかいな。
きょんなむさんも友人のエム・ナマエさんの絵本を2冊、読み聞かせをしてくれた。きょんなむさんの大熱演に、こどもたちは大喜び。きょんなむ姉さん、新境地開拓デスネ。
いなほ保育園のこどもたちは、野生児のように庭で手づかみで給食を食べ、一日中裸足で土の庭園を駆け回り、木に登り、手作りプールで泳いで遊ぶ。そして、歌い、笑い、跳ね、踊る。幸せなこどもの時間。
こころとからだにいっぱいの愛と栄養をもらって、この子たちはどんなステキな人に成長するんだろう。たのしみたのしみ。

「いなほ保育園の十二ヶ月」
北原和子著 (聞き書き塩野米松)
岩波書店刊



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